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未定着の記憶(ワーキングメモリ)

神経学において、記憶の定着には海馬が関与している事が過去の手術実績から明らかになっています。 これは、過去に発作を起こした患者が、これの原因が海馬にあるとして診断した医者によって海馬を取り除かれたことで明らかとなりました。 海馬を取り除く事で、患者の発作はおさまったものの、手術後に30秒以上の記憶が保てなくなったことで、これが決め手となりました。 但し、30秒間は記憶を維持できるということです。

この事をAICoreの設計概念と比較してみようと思います。 上記の話から、海馬の欠除は、AICoreでいうところの、欲求生成ロジックの欠除であると仮定します。 そうするとどうでしょうか?AICoreでは一切の記憶を保持できないことになります。 この30秒間の記憶を欲求という形で保持せずに、AICore上で扱えるようにする利点はなんでしょうか?

考えうる点は、

 ・進化の過程で高速な処理速度を必要としていた為、このような仕組みとなった
 ・無駄な記憶を定着させない
 ・自身が何を何処まで実行したか把握(自意識)する為の情報を保持する。 この記憶は欲求生成とは関係無く、欲求利用の履歴としてワーキングメモリとして保存される。

あたりでしょうか。
初めの1点目、2点目は実装が無くとも知性の発現の確認に必ずしも必要ではありません。 ですが3つ目は無視できません。これは欲求を利用した連続動作における記憶(自己の行動履歴)が保存される必要がある為です。 AICoreにも必須と言えます。 更には、この症例から言える事として、快楽を受けた時でさえも、 30秒以前の行動が長期記憶に定着されていなければ遡って思い出して記憶に定着されることは無いということを示唆するものです。 上記の機能でワーキングメモリをAICoreに実装します。

また、上記の該当患者において海馬がなくとも長期記憶が保存されるケースがあることも実験により周知の事実となっています。 これは、鏡の中のみを見る事を許可した状態で、星をなぞるだけの実験ですが、該当患者は、何度も練習するうちに、 なぞる速度が速くなったという結果が出ています。経験値、すなわち記憶が、蓄積された証拠とされています。

果たしてそうでしょうか?完全な新しい記憶を維持したという訳では無く、時間が短縮されたというだけの話であれば、 記憶したとは言い切れないのではないでしょうか。 今回の症例では、新しい体験により、欲求が作成される部分と既存欲求の利用履歴を管理する部分は別に存在していることが分かりました。 欲求作成機能が無かったとして、利用履歴管理機能は正常に機能したとすれば、改善されたのは誘引検索のスピードという可能性もあります。 もしかすると、訓練により誘引検索時の欲求の連結の仕方が変わっただけなのかもしれません。




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